バチカン市国の取り組み (2050 排出量ゼロへ向けて)

先ごろ、バチカン市国では2030年までに公用車をすべて電気自動車(EV)とするため、フォルクスワーゲン社とパートナーシップを結んだことが、複数のメディアで取り上げられました(2023年11月)。

バチカン市国は聖座として、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)およびパリ協定に加盟しています(2022年9月4日付に非附属書I国として批准、同年10月4日付公表)。加盟公表に際し、領内の2050年までの温室効果ガス排出量ゼロの公約と、発展・持続可能性、友愛、人と自然環境とのシナジー(相乗作用)を基盤とした「新たなライフスタイル」の振興のための、インテグラル・エコロジー教育の推進に力を注ぎたいという教皇の意向が、バチカン市国の国務省長官によって紹介されました。

世界最小の領土44ヘクタール(東京ドーム9個分ほど)のバチカン市国は、国連アジェンダ2030の目標(SDGs)に連なり、カーボンニュートラル化を目指す「エコロジカルな回心2030」計画を発表しています。上記のEV化もこの一環です。市国内および周囲には充電網を設置して全職員に利用を開放し、いずれ必要なエネルギーを再生可能エネルギーのみでまかなうことを目指しています。

これまで知られている、バチカン内の取り組みを紹介します。

  • ごみの分別収集と分別処理。
  • 100以上ある噴水のため、再利用する閉鎖式水循環システム採用。
  • 芝や植え込み植物への灌漑・散水システムの再構築。
    ⇒新たなメンテナンス技術を導入した配水管の近代化を図り、植え込みの植物に合わせた散水による水節約。
  • 既存の生態系保全を助ける総合管理システムを構築。
    ⇒天敵昆虫や毒性のない成分配合の農薬、輪作、耐病性品種の導入を通じて、有害農薬の段階的削減に注力。
  • 従業員食堂にカフェテリア方式導入。マイカップ推奨。
  • ソーラーパネルを設置して、供給網を通じて各所へ送電。
  • LED化を含む、照明設備の各種アップデート。
  • 室内の自然光に応じて光度調節を行い、光と動きを感知する(労働者の安全と健康に配慮する法律基準を満たすため)最新のセンサー設置。
    ⇒旧来のシステムから、環境負荷を低減する技術改善がなされた新世代のオペレーティングシステムに完全に移行済。
    ⇒スタッフ不在時には自動消灯、営業終了時には電力供給を停止。
  • 2018年のシスティーナ礼拝堂の天井照明設備の交換。
    ⇒エネルギーコストと温室効果ガス排出量の約60パーセントが削減。これに伴い、フレスコ画の劣化速度の抑制効果もある。
  • サンピエトロ広場、ベルニーニの柱廊、サンピエトロ大聖堂の照明設備交換。
    ⇒70~80パーセントの省エネ実現。さらに丸天井の装飾の視認性も格段に向上。

(以上、“Journeying Towards Care for Our Common Home: five years after Laudato Si’ ”、2020年より)